第3代支部長:佐藤匡也 先生

日本心血管インターベンション治療学会東北支部
坂総合病院 循環器科 佐藤 匡也

誇るべきわれわれのCVIT東北地方会

 諸先生方の格式高いお話とは趣向を変えて、「発足当時からの生き証人」として一風変わった内容で寄稿いたします。
私がこの世界に入ったことの始まりは1987年、秋田県成人病医療センターでの上司、門脇謙先生からの一言でした。「お前、心カテ相当やってきたよな?だったらこれからPTCAをやるから小倉の延吉先生のところに行ってこい」とのこと。PTCAってなんだろ?と思い、その頃出ていた数冊の教科書を連日連夜読みあさって小倉に行きました。すでに東北地方では青森の三国谷先生、菊池先生、岩手の田巻先生、野崎先生、深見先生、福島の木島先生、山形の横山先生、荒木先生、宮城の目黒先生、故宗像先生などがPTCAを施行しておられました。全国的には1985年から日本冠動脈形成術研究会が開催されており、当時の研究会誌創刊号をまだ手元に残しております(図1)。東北では田巻先生、木島先生を中心として発足した東北PTCA研究会が開催されておりました。直接の師匠もおらず、みようみまね、試行錯誤しながらの毎日の治療だったので、まだ数少なかったこのような研究会への参加は、諸先輩からいろいろとご教示願えるチャンスであり、面識もない諸先生方にずうずうしく話しかけてはいろいろ教えていただきました。研究会への参加は技術、知識の習得とともに、モチベーションをあげるための糧となって、参加することが楽しくてしかたなかったことを記憶しています。

 岩手の田巻先生にも懇意にさせていただき、山形の地方会からの帰りのバスがご一緒でした。その道中で、「小さいバルーンから徐々に拡張していた頃は、こんなにSlow flowなんかなかったよね?」と田巻先生がおっしゃいました。この会話がヒントになって、Slow inflation/deflation法、MUSIC法を考えて発表させていただきました。知らない方も多いかもしれませんが、Coronary friendly dilatationとしていろんな方が利用していただいていると聞いております。

 2010年からCVIT東北地方会支部長を拝命したのですが、ことの始まりは、2009年の冬、当時支部長であられた木島先生からの直接のお電話でした。「東北地方がようやくまとまってきたと思うんだけど、次の支部長は先生にやってもらうことになりそうなんでよろしくね!」とのこと。突然のことだったので一度は保留にしたのですが、秋田の周りのスタッフが「せっかくの申し出なんだからやるべきだ!やれ!」と背中を押してくれたので引き受けました。いささか人望のない私が支部長ではこころもとなく、2011年の震災の際にも右往左往したのですが、故加藤敦先生さらには片平美明先生が副支部長として支えてくれたので問題なく会が運営できたんだと思います。引き受けたからにはということで、真っ先に始めたことは、東北地方のコメディカルスタッフの教育でした。その前から秋田では県内全体を巻き込んでコメディカルのための勉強会を数多くやっていたのでそれを発展させた形にしました。しかしながら、一人ではなにもできないので、星総合病院の添田技士長に多大な協力をいただきながら、全国に先駆けてCVIT東北地方会コメディカル部会を発足させました。このコメディカル部会が全国のコメディカル部会のモデルになりました。添田技士長の多大な努力のおかげもあり、今でも東北地方のコメディカルスタッフが最高のレベルだと思っております。コメディカル部会の現部会長堀井里美さんは、私が秋田に在籍していた頃から一緒に学んだ仲間であり、高いモチベーションもあるのでより一層発展させてくれるものと期待しております。

 さて、私の個人的な感想ですが、地方会での諸施設からの発表や諸先生方のお話は、何年たってもとてもためになり勉強になるものだと思います。自分の周りでCoronary Interventionにかかわっている医師も含めて、若い先生方がもっと学会に積極的にかかわって発表してもらいたい、質問してもらいたいと思っております。成功したことより失敗したことから学ぶことが多いと思うので、ダメだった症例を持ち込んでいろんな先生方のご意見を聞いてほしいのです。CVIT東北地方会は自分が経験できないような症例に出会う機会になるし、様々な知識や技術を得ることができる絶好の場所であると思います。学会に参加すればなにかしら新しいことが頭に残るはずです。自分たちのやっていることの立ち位置がわかると思います。余談ですがPalmaz-Schatzステントという日本で最初の金属ステントが出てきた際に私が初めて使った症例は心筋梗塞急性期症例であり、その後十数例使用して地方会で発表しました。そのときには「結果がよかったのは幸いだけど心筋梗塞急性期はステント使用の適応外だということ知らんのか!」と諸先生方にこっぴどく叱られたことがあります。こんなふうに発表しては何度も打ちのめされて、その都度教えていただいて、いろんな先生と交流を持つことができました。この文章を読んでいただいた多くの先生方が、「佐藤ってそんなことをしていたんだ、だったら自分も地方会に行こう、地方会で発表しよう」という気になってくれたら幸いです。

 最後に一つ、東北地方でCoronary Interventionを続けてきた一人として誇りに思っていることを紹介させていただきます。図2にCoronary Interventionという雑誌の創刊号を紹介します。そのチーム医療に関する連載企画の第1回が東北地方会を育て上げて今でもご指導いただいている星総合病院の木島先生と添田技士長の寄稿でありその内容に大変感銘を受けました(図3)。我々のCVIT東北地方会は、この世界にかかわっているあらゆる職種の方々と一緒に勉強して作り上げてきたという歴史があり、医師とコメディカルスタッフがお互いに補完しあってよりよい医療を提供できているんだという礎がこの記事にあります。私は、この木島先生からの教えを胸に刻みながら8年間支部長をさせていただき、次の支部長を小松先生に引き継いでより一層発展させていただきました。これからはさらに有意義な学会になることを現支部長の中里先生に託して、陰ながら応援させていただきます。