第54回東北地方会特別企画

「働き方改革導入後の心筋梗塞治療を考える」

会  期:2024年1月27日(土)
会  場:アイーナ(いわて県民情報交流センター)
座  長:中里 和彦 先生(福島県立医科大学 循環器内科学講座)
     石田  大 先生(岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 准教授)

登壇者

基調講演:中里 和彦 先生(福島県立医科大学 循環器内科学講座)

 青森県:花田 賢二 先生(弘前大学 循環器内科)
 岩手県:肥田 頼彦 先生(岩手医科大学 循環器内科)
 宮城県:圓谷 隆治 先生(大崎市民病院 循環器内科)
 秋田県:鈴木 智人 先生(秋田大学 循環器内科)
 山形県:加藤 重彦 先生(山形大学 循環器内科)
 福島県:八巻 尚洋 先生(福島県立医科大学 循環器内科)

講演スライド

※ ご講演スライドの転⽤は堅くお断りいたします。

総合討論

【中里 先生】
各演者が凄く力を入れて作った発表のスライドを準備していただいたと思うのですけど、その上で他の演者の先生、他の県の状況を聞いた上で、最後にこれだけは一言言っておこうっていうのをお願いいたします。

あとは私聞いて思ったのですけど、何て言うのですかね、東北地方はおそらく、もう研修医制度が変わって残る人が少なくなって久しいので、これから医療崩壊が起こるとか、やれないところが増えるっていう医療施設の淘汰みたいなのは実は、幸か不幸か終わってしまっているような気がします。それをいかに回していくかっていう問題を働き方改革が適用された後にどうしていくか、もう皆さん言っていましたけど、だんだん循環器を、希望する人が減ってるところをいかにまた希望者を増やして体制を維持していくかっていうようなところに腐心されているように思いますので、現時点ではまだ「働き方改革」というものが厳密な適用されていない状況でのお話ということになりましたので、これはぜひあと2年後ぐらいにですね、もう一度現状を検証しないといけないと思うんですね。

我々が今こうやって考えて対策を取ろうと思っていることに対して実際その後どうなっていったか。というのを、ぜひ同じようなシンポジウムを数年先の地方会で開きたいというふうに思います。それでは各他の県の発表を聞いた上でのお1人ずつですね、これは言っておきたいっていうことを短くて結構ですので、今度は発表順とは反対の南側から、行きたいと思うんですけど、福島県の八巻先生、お願いします。

【八巻 先生
はい。各県の先生方のプレゼンテーションをお聞きしまして、どの先生方も同じように悩んでらっしゃるということが、わかりました。やはりこの問題というのはなかなかいい解決方法というのはすぐには見つからないのが、現状かなと思います。
ただその中でも、私も最後にお話しましたけども、やはり少しでも変えていかないと、今の働き方改革というのが、4月が始まってもまだ厳格な適用ではないという間は何とかなると思いますけども、その後、立ち回らなくなるという可能性がありますので、今考えていかなくちゃいけないというのが現状だと思います。

【中里 先生
はい、ありがとうございました。それでは山形県 加藤先生、一言お願いします。

【加藤 先生
山形大学の加藤です。皆さん方の発表を聞いて、やはり私も皆さん同じことで悩まれているなというのがよくわかりました。私のスライドは、どうしても大学病院のように人が多いところでの、その当番制の改革であったりというので、ちょっと地域のですね、人が少ない病院の先生方ですとそんなの出来るわけないよというふうに批判ももしかするとあるかもわかりませんので、ちょっとそれは私の、一応施設での状況というふうなことでお話させていただきました。
やはり私が発表しているときに最後に、ちょっとお話したんですけれども、よくこの配送業のドライバーの方々とかは働き方方改革が導入されるにあたって、やっぱり仕事を減らす努力をしましょうという形で、例えば置き配を増やすとかですね、あとはどこか荷物の受け取りのスポットを指定してそこになんていうふうな形で、仕事そのものを減らす努力がなされてるいと思うんですけども、医療はなかなかそういう議論が出てきてなくて、ただ困っている方もちろん、治療をしないなんてことは当然ありえませんので、もうちょっとやっぱり1次予防も国民全体に呼びかけて、病気になる前に治療するといいますか、そういった急患で、そんなに受診しなくてもいいような形をとるべきなんじゃないのかなっていうふうに私自身としては考えている次第です。

【中里 先生
はいありがとうございます。それでは秋田県 鈴木先生お願いいたします。

【鈴木 先生
はい、秋田の鈴木です。我々のところでやっぱり循環器を結構希望していても、やっぱ救急に取られちゃったっていうのがやっぱりいくつかあって、やっぱそれってオン・オフっていうふうに言われたんですよね。
なので、やっぱり循環器、やっぱり今の段階ではそのオンオフがかなり明確ではない部分がちょっとグレーなところが大変あるので、そこをちゃんとしっかりやっていくことが一つかなということと、あとはやっぱり今でも循環器内科医のその自己犠牲の上にまだ成り立っているので、それを何とか変えられるような政策になればいいかなと思っています。

【中里 先生
はい、ありがとうございます。それでは、圓谷先生お願いします。

【圓谷 先生
はい、ありがとうございます。僕は皆さんが、他の大学の先生が送る。いろんなところに送るっていう話をしていましたが、僕は逆に送ってくださいってお願いする側なのですけども、ただ実際例えば東北大学とかお願いしてもなかなか人が増えてないという事実もよくわかっています。やっぱりこの今の人数で何とかやってくるということをちょっと考えなきゃいけないとずっと思っておりまして、発表中でも話しましたけど「効率化」、「効率良い診療」を日中することによって、なるたけ早く終わって夜間に備えるというのが一番かなと思っています。加藤先生のもすごく僕、いいなと思ったのは病院行きにならない、あるいはもっと早い段階で来てもらえるような段階でACSはもうしょうがないと思っているのですけど、心不全なんかは結構、「実は3日前からちょっと息が上がっていました」とか、「むくみが1週間前にありました」と近くに行ったんですけど「様子見てって言われました」とかそういったことが結構あってですね、それが夜間に来ると結構ストレスになる。そこをやはり心不全は特に地域医療連携が大事だということがありまして、そういったところでより早期に介入できればというのはあります。実際うちも心不全面談というのを入れて、早期に介入して早く良くするというのを心がけておりますし、地域連携のパスなんかも一応やっていたこともありましてそういったところで、なるべく夜間の仕事を減らすということも大事かなと思いました。

【中里 先生
はい、ありがとうございます。それでは岩手県 肥田先生お願いします。

【肥田 先生
私、皆様のスライドを拝見させて思ったのがまずドクターを増やすということと、それから変えなきゃならないっていうこと。これはちょっと共通認識かと思うんですけれども私が地方の病院にいたときに考えたことは自分がここの地域の循環器診療になっているんだという気持ちでやって朝も夜もなく働くということ、それ自体は誇りに思っているんですけども、もしかすると時代的にはそういった考え方がそぐわなくなってきているのかもしれないなということをちょっと皆さんスライドを見て感じたところであります。
なので、オン・オフをはっきりさせるためのシステム作りということが、今後の循環器の先生を増やすことにも繋げる形で構築していく必要がもしかしたらあるのかもしれないなということを自分の中でも改めて思いました。あとどの皆様の県でもすごくカツカツのところで本当に頑張っておられるのだなということを再認識したいです4月以降も頑張っていきたいと思います。

【中里 先生
はい、ありがとうございます。それでは最後は青森県 花田先生お願いします。

【花田 先生
今回のシンポジウムテーマである心筋梗塞診療を春以降どのように維持していくかという話だったと思うんですけども、AMI、ACSだけ見なさいってことであればそれは当然ながらできると思うんです。AMIだけでアップアップではないと思いますから、どのようにその他の業務を減らしていくかということに具体策を講じるべきであって、もしその内科でちょっと余力がある科があるのであれば、やっぱり一般病院で大きな診療の負担と言ってはなんですが多く時間費やしているのは肺炎ですとか尿路感染症とか脱水ですよね食欲不振そのような一般内科診療をもしAMI診療が続けられないのであればそれを他の診療科にちょっとお願いする、あるいはもっと言うと、心不全も何歳まで循環器内科が関与をするべきなのか、弁膜症なら別として、いつまでどういうシチュエーションであれば夜中であっても行くべきなのか、心不全ももうある程度高齢になってくるとコモンディジーズだと僕は思っていますので、そのあたりもやはり他の内科で分担する。
他の内科で分担できなければ他の病院との連携を考える。それもできなければ循環器内科については全科当直を免除する、そういう方法でやっていかないと、もはやもう成り立たないんじゃないかと思っておりまして、そういうのをやはり研修医っていうのは一番当直していますから一番呼び出しているわけですよね一番循環器内科の先生を呼び出して、一番身をもって体験しているわけですからそこを少し減らしていかなければ、根本的な解決にならないのじゃないかと思っています。

【中里 先生】
はい、ありがとうございました。もう本日、時間も過ぎてしまっているのですけれども、皆さんの大変な取り組みがよくわかる発表だったというふうに思います。我々はですね患者さんの命を助けたりすることで忙しいということは実は生きがいと裏腹なところがあるのですね。だからあんまり表立って言えないですけど、頑張るから待遇良くしてくれっていうのが一つの本音だと思うんですけども、私も行政といろいろやっているうちに気がついたんですけど例えば厚労省が働き方改革で、過重労働を避けましょうというのは時間のことだけなのですよね。

経済的な裏付けは財務省の仕事でしょ、みたいになってしまうので非常に難しいところあります。我々だけに何か手厚くしてくれって言っても他の科がどう思うかわからない。とかっていう本音を言ってしまえばいろんなことがあるのですけれど、やっぱり我々としては貴重な循環器の診療体制ですね、この東北でも皆さん本当に踏ん張って、頑張っている、これに価値があるんだっていうこと。そのために我々はかなり無理して今頑張っているっていうことを広くですね、冷静な形で世の中に示していくっていうことも、次のステップに向かうには非常に大事なのではないかというふうに思います。ぜひ先ほども言いましたけれど、実際に働き方改革制度というのが医師に適用されて運用されてしばらく経った後に、検証の会をやりたいというふうに思っています。石田先生何かコメント。

【石田 先生
はい。いろんな各地域の先生方がご苦労されているということをよく理解しましたし、多分二つポイントがあると思うんですけど一つはタスクシフトだと思うんですけどタスクシフトは何もメディカルスタッフの方にお仕事を分け与えるとかじゃなくて、例えば外来の患者さんで、コモンディジーズの方を地域の先生にお戻しするとか、診療科内での少し連携をするとか、多分そういったことも含めて4月から改革を進めていかなきゃいけないんじゃないかなということが一つと、あとはやはり率先してやっぱりまずは、何はともあれもう休むってことが大事なのかなと、いろいろやっぱり圓谷先生からもお話ありましたけど無理して休みを作るとかえって時間外が増えてしまうっていうその問題は、非常にこれはやっぱりやってみないとわからないことですので、とにかくやっぱりしっかり、当直明けに休むとか、多少無理してでもその休める環境を少しずつ作ってくってことが大事なんじゃないかなというふうに私自身実感しました。

ありがとうございます。はい。それでは今回石田会長に頼みまして、このようなシンポジウムが組めたこと非常に私自身も幸せに思いますけど、また各県に戻って、目の前のことと立ち向かってですね、日々頑張っていただければというふうに思います。

本日は本当にありがとうございました。